【第1回】老後の生活資金と資産運用に関する現状

確定拠出年金に関する意識調査コラム2023

野村アセットマネジメント資産運用研究所では、2022年12月に「確定拠出年金に関する意識調査2023」を実施しました。本調査は20歳~69歳までの8,386人を対象に、確定拠出年金(企業型、個人型)の利用状況などについてご回答いただいています。そのアンケート結果より、第1回は、老後資金・資産運用の現状、各種年金等における受取金額の把握状況についてご紹介します。

約8割の人が老後の生活資金に不安があると回答。一方で、約7割の人は資産運用に取り組んでいない

はじめに、老後の生活資金への意識と資産運用の現状について見てみましょう。
「老後の生活資金に関して不安がある」と回答した方は全体の79%にのぼりました。年代別に見ると、あらゆる年代で70%を超えており、老後における金銭面での不安感は多くの人に共通した悩みといえそうです。一方で、「老後の生活資金として、いくら必要か知っている」の割合は41%、「老後の生活資金の為に、資産運用に取り組んでいる」の割合は30%にとどまっています。多くの方が老後の生活資金に不安があると感じている一方で、7割程度の人は資産運用に取り組んでいないという現状が伺えます。

老後資金・資産運用の現状認識(全年齢平均)

老後資金・資産運用の現状認識(全年齢平均)の図

また、全体の46%の方は「資産運用に関するアドバイスが欲しい」と考えており、特に20代、30代では、アドバイスを必要としている人がそれぞれ58%、59%と多いことがわかります(下記の表参照)。自分自身について「資産運用のリテラシーがあるほうだと思う」と捉えている人の割合は15%と低いことからも、アドバイスへの一定のニーズがあるといえそうです。
老後における金銭面での不安感の解消・軽減は社会的な課題の1つと考えられ、その解決にあたっては、金融機関や専門家等によるサポートの必要性が求められているといえるでしょう。

老後資金・資産運用の現状認識(年代別)

老後の生活資金に関して不安がある 資産運用に関するアドバイスが欲しい 老後の生活資金として、いくら必要か知っている 老後の生活資金の為に、資産運用に取り組んでいる 資産運用のリテラシーがあるほうだと思う
TOTAL 79% 46% 41% 30% 15%
20-29歳 77% 58% 39% 28% 17%
30-39歳 79% 59% 40% 36% 19%
40-49歳 86% 48% 36% 30% 14%
50-59歳 80% 42% 42% 28% 12%
60-69歳 71% 29% 50% 25% 13%

各年金制度で受け取れる金額を知っている人は50代で40~50%程度

次に、各種年金から自分自身が、将来いくら受け取れるかを知っている人がどの程度いるかについて見てみましょう。なお、企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)、個人型確定拠出年金(以下、iDeCo)の利用者については、想定する受取金額(シミュレーション結果)を把握しているかを調査対象としています。

公的な年金である国民年金、厚生年金/国民年金基金からの受取金額を知っている人はそれぞれ36%、33%、私的な年金である企業型DCおよびDB(確定給付企業年金)、iDeCoおよびiDeCo+(中小事業主掛金納付制度)からの受取金額を知っている人はそれぞれ41%、36%という結果となりました。

各年金制度における受取予定金額の把握(全年齢平均)

各年金制度における受取予定金額の把握(全年齢平均)の図

年代別に見ると、どの制度においても、60代の割合が大きいことがわかります。これは、この年代の人が既に各制度から年金を受け取り始めているからにほかなりません。以下の表を見て、顕著に表れている2つの特徴について触れておきましょう。

一つは、多くの制度において、50代と60代の間に大きな差がある点です。年金を受け取り始める時期が近づいている50代において、受取金額を把握している人は50%未満となっています。50代は老後のライフプランについて明確にする時期が迫っていることから、受取金額を再確認するなど、できるだけ早めに考え始めることが望ましいと思われます。

もう一つは、企業型DC、iDeCoなど自らの意志の反映が求められる制度においては、20代から40代で、公的な年金よりも受取金額を把握している人が多く、老後の金銭面での不安を解消するために若いうちから意識している方が一定数いることがわかります。老後の年金受取予定金額を早めに把握することによって、将来のライフプランをより具体的に考えることができるようになると思われます。

各年金制度における受取予定金額の把握(年代別)

国民年金 厚生年金/国民年金基金 企業型DCおよびDB iDeCoおよびiDeCo+
TOTAL 36% 33% 41% 36%
20-29歳 15% 15% 31% 37%
30-39歳 25% 26% 38% 37%
40-49歳 27% 27% 37% 32%
50-59歳 38% 42% 49% 37%
60-69歳 70% 71% 62% 40%

いずれにしても、どの世代でも老後の金銭面での不安が大きい状況を鑑みると、各自が必要な資産形成について向き合うこと、具体的には、老後に必要な資金の把握、各種年金からの受取金額の把握、私的な年金制度の利用、余裕資金でのさらなる資産形成などが必要なのではないでしょうか。

次回は各年金制度の認知状況と利用意向について紹介していきたいと思います。